酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

2022-01-01から1年間の記事一覧

近所のカフェ スイーツ男子とかコロナとか戦争とか

どんより暗い底冷えの朝の氷雨が上がった。ぱあっと胸の奥を照らすような陽射し。きらきらと眩い雨上がりの午後の陽射し。 嘘のようだ。束の間の魂の自由、このひとときがあればこれからも生きられるかもしれない。こころがすべての現実の牢獄を忘れるひとと…

お姉ちゃん、というのは。(続・星野智幸メモ)

お姉ちゃん、というのは固有名詞だった。 ものごころついたとき、「お姉ちゃん」はお姉ちゃんとして存在し、家族皆から「お姉ちゃん」と呼ばれるものであった。「課長」「部長」と同じ。父・母・長女・次女で構成される四人家族の中の役職が呼び名であったの…

星野智幸メモ

自我を放棄するときのその甘やかな悦楽と陶酔感を。喰われるときの、殺されるときの。 *** *** 今回と次回の投稿は、星野智幸デビュー記念としてのメモである。だんだんこの作品世界にくじけてきたので、イメージが醸成されてきたところで記録を残して…

キリン6 遅咲きガール

純ちゃんの「遅咲きガール」なんか口ずさみながら、あたしはアパートのエレベーターから降りるとご機嫌で玄関のドアを開けた。 キーホルダーにつけたキリン・コクーンがやわらかなみずいろの微光で手元を照らす。 (遅咲きガール遅咲きガール、初めてのデイ…

家出の年

その冬は酷く厳しい寒さになり、その夏は殺人的な猛暑が続いた。 災害が多発した。疫病が流行った。世界中に戦争の火種がちろちろと炎を上げはじめ、難民があふれ、世界中で人々の暮らしは厳しくなった。人心が荒れた。何もかもが関連して現れる。 元首相が…

至福と哀しみ

晴れた夏の午後、晩夏の斜めの光、懐かしい、透き通った光の色。 正しい土曜の夢、再びそこに触れたかった。 現実とされる自我の牢獄の幻想から逃れ、繰り返し戻ることのできる場所、心の中の、魂のその深奥に仕舞い込んだ絶対の故郷へのアクセス法を確立し…

金木犀

28日水曜日、目が覚めると開け放った風の中に一筋の懐かしい香り。 東京の金木犀が一斉に香りだした。 開花解禁日が街の金木犀組合で決められてるんだな、きっと。植物根っこを伝わるラシネーインターネット電子信号か空気中ホルモン放出かなんか未知のネッ…

森見登美彦「有頂天家族」

(※注・大分前に書き始めたものを寝かせながらぼちぼち書いた記事である。) 五山送り火の今宵、ちょうど再読を始めた「有頂天家族」で下鴨一家が五山送り火納涼船を出そうとする章に差し掛かる。セレンディピティ! ということで森見登美彦再読大会絶賛継続…

不幸と孤独は悪である。

人間は不幸になってはいけないのだ。 孤独な不幸は悪である。 なぜならば、全世界への、関わるすべての相手への恐怖と憎悪、感情的に反射的な反感「敵認定」はすべて孤独な不幸に起因するものであり、それは結局は、戦争の根源、不寛容の根源、多様の否定、…

うつくしくないごみ、そしてうつくしい生きかた

こないだ友人がバカンスに出かける前に,まあいらっしゃいなあ、などと愛を持ってご招待してくれたのでやれありがとうと、珈琲をご馳走になってきた。 もにゃもにゃとあれこれおしゃべり。 ここでふと課題が提出される。 近所のおうちのゴミ置き場のゴミがカ…

晴れた夏の朝

晴れた夏の朝。 母が抗がん剤治療のために入院する朝。荷物をもって車の前まで見送った。眩い朝、見送る車が強烈な光の向こうへと遠ざかる。 昔見た風景のことを思い出した。 *** *** 人々のいつもの通勤電車。けれどその朝は日常から少しだけ、いや、…

森見登美彦「聖なる怠け者の冒険」

まさか森見登美彦のコレを再読することになろうとは思わなかった。 独特のナンセンスと切れ味の鋭いエスプリ、自虐的諧謔に満ちた文章の饒舌っぷりは、私にとって肌に馴染むまでにちいとハードルが高いのだ。 「ペンギン・ハイウェイ」の、少年たちの目に映…

「ペンギン・ハイウェイ」森見登美彦

論理。迷宮。ナンセンス。(「鏡の国のアリス」から謎の怪物ジャバウォックのモチーフ) 根源。宇宙。不可思議。研究。 世界の果て・理不尽・虚無・死或いは死後未生 *** *** 舞台は、郊外の小さな駅のベットタウン、平和な新興住宅地だ。ここに、ある…

夏の週末。カフェ。

猛烈な陽射しの夏の午後だ。土曜日、昼下がりの駅前カフェ。 狂ったような陽射しに、ほたほたと落ちる汗、麦わらを透かして光は私の顔を陽炎のように彩り、アスファルトからゆらゆらと立ち上る熱気がその陰影を揺らめかせる。気が遠くなりそうな懐かしい遥か…

ねじまき雲 カフェの効用

「1時間半毎に注文必須」・「3名以上お断り」・「撮影制限有」・「店主本位の店なので、守れなかったら退店してもらう」 …この店、禁止事項だのなんだのの注意書きながめてるとだな。なんだか高飛車で偉そうで怖い人が出てきそう、いかにもワシは客選ぶぞの…

阿佐ヶ谷 (サーティワン)

通りがかったサーティワンの店先を眺めていて不意に思い出した。(今月スペシャルフレーバーはキャラメル抹茶オレ) 初めての街で初めての買い食い、初めての友人からの奢り。一度に何人もの取り巻きの友人たちに専門店のアイスクリームを奢る中学生なんて奇…

戦争というのは非常に怖い

戦争というのは非常に怖い。怖いものには近づきたくないんだが大抵怖いものは向こうからやってくる。暴力は向こうから襲いかかってくる。理不尽は向こうから襲いかかってくる。 不安と恐怖、そして寂しさに耐えきれず憎悪と暴力に変換する人間というのはいる…

二月の日曜日

二月の日曜日。ひとりでぼんやりとガラス戸の朝陽の蜜の中サボテンを眺めていた。幸せだった陽だまりの日曜日の記憶の中にいた。非常にかなしく幸せな至福の朝であった。 穏やかに降る朝の光、静かな二月の早春の光。 光の春。柔らかな、そして力づよい新し…

物豆奇・「ユリアと魔法の都」辻邦生メモ(銀河鉄道的なるもの。)

昨日、どんぐり舎に行こうとしたら満席だったので物豆奇へ。(ほんの2メートル先を歩いてて目の前で店に入っていった老夫婦に負けたのだ。最後の空席、そしてしかもとても可愛い窓の近くの居心地のよさそうな大層よろしい感じのとこだった。ワシは悔しかっ…

「村田エフェンディ滞土録」梨木果歩

ディスケ・ガウデーレ。楽しむことを学べ。 鸚鵡の生命力とエスプリを根こそぎ奪い取り、魂をうちひしいだ喪失の痛みから、その目の輝きを取り戻させたのは、村田のこの囁きであった。戦争前、嘗ての日々の、そのかけがえのない平和と友愛が当たり前に存在し…

梨木果歩「家守綺譚」補遺

これとこの続編の「冬虫夏草」の感想は最初に読んだとき、とりあえず考えたこととして記事は書いてある。それなりに一生懸命。 ここね。 コレでまあほぼ、私なりにわたしにとっての「冬虫夏草」の作品としてのひとつの読みの骨組みは、そのエッセンスのとこ…

チョコレート・ドーナッツ(そしてチョコレート麦酒)

普段、私はドーナッツに興味を持たない。 シュークリームやチョコレート、和菓子に洋菓子、菓子類すべてに尋常ならぬレヴェルでの深い愛情と激しい執着を持つ私が、である。(アラビアンスイーツやアジアンスイーツ、流行りのエスニック系もあまり射程には入…

ブラッドベリ「華氏451度」

寒さに滅されそうになりながらブラッドベリ「華氏451度」に取り憑いている。年末に火星年代記をレビュしたとき、こんな風に予告しちゃったしさ。 ~さて次は「華氏451度」にいこうかな。「100分de名著」で一通りのあらすじや指南役の先生の解釈を聞いたけど…

通俗とアカデミズム(100分de名著ヘミングウェイメモ)

最近M子とよく話す。 *** *** *** 100分de名著、ヘミングウェイスペシャル録画視聴了。回によってのあれこれの視点は散らばって、私の興味はそのあれこれに当たったりはずれたり。とりあえずすべての箇所につかみ取るものはある、などとひとまず思った。 …そ…