酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

2021-01-01から1年間の記事一覧

「火星年代記」レイ・ブラッドベリ

以前、安房直子さんについて書いたこの記事の最後で、ついでにブラッドベリについていつか、と予言していたので気になっていた。まあとりあえず今回の主旨はアレの続きである。 *** *** *** 最近いろいろと機会があってM子とよく話す。 旧友である。高校時代…

ビーフシチュー

既に早12月、クリスマスも解禁の、キンと冷え込む星空はあくまでも清冽に美しく、夜をかけ宇宙をめぐる壮麗なるオライオン。 …それにしても寒がりにはいささか厳しい冷え込み厳しい冬である。 *** *** *** とういことでこの季節、なによりのごちそうは、おな…

安房直子「ハンカチの上の花畑」再読。アイデンティティ崩壊の向こう側に繋がる異界(読後感メモ)

さて、ちいと前の話ですが、9月9日。あんまり騒がれないけど、重陽の節句だったんである。 日本では3月3日や5月5日が有名なのに対し、知名度は低いけど、本場中国では実はけっこう重要な節句であるらしい。陽が重なって重陽。めでたい、と。 重陽の日って何…

100分de名著「戦争は女の顔をしていない」 2021 8月放映

TV

興味深く観たんだけど、歴史の中の、その事実の残酷さ、恐ろしさ、深い痛ましさやるせなさにショックを受けたんだけど、そしてこの番組は確かに相変わらず深い知性と忍耐力、実力を備えたバックボーンを感じさせる優等生なつくりなんだけど、なんとなくあれ…

ファイザーワクチン接種、ニーチェの真理

さて、新型コロナのワクチン二回接種ミッションクリア。副反応的なるものは(二回目の後特に)かなり辛いものではあったがヤマは越えた。 で、免疫細胞というのは大体ワクチン二回接種後二週間で効果が充分発揮されてくるという。 …ということは、私の細胞が…

2021 お盆 鈴木慶一

最近とみにぼんやりとしたくたびれ具合が心配になってきた父である。TVの前でニュースや国会中継なんか眺めてはぶつぶつと文句を言っている。酷い時代になっちゃったからな。でもね、脳が加齢のせいで気力も萎えてきて記憶の前後関係とかあれこれぼんやりし…

小森香折 エゼル記

何故この叙事詩のような神話のような、荒唐無稽な設定の幻想物語がこうも私の心を打ったのだろう、感情を揺さぶったのだろう、とずっと考えていた。これは情趣に満ちた風景描写や幻想の美しいイメージからくるものではあるんだけど、それだけ、と言うことで…

流星シネマ 吉田篤弘

ということで様々なモノの渦巻くコロナオリンピックの騒ぎの中、すっかり脆弱な心身のバランスを崩してへばってしまった自分、ただひたすら身を守り心を鎮めるためにこんな本を開いてみている。実家に逃げ込んだのだ。 で、内容である。 …吉田篤弘はやはり吉…

土産

近所に住む古い友人が、長野の山奥から戻ってきた。(一泊だが。) 隠れ家旅館でうまいものを食い、のんびり山歩きをしてきたから土産を買ってきた、取りに来ないか、というメッセージをくれたのだ。で、夕暮れ前の柔らかなひととき、のそのそとブツをいただ…

洗濯屋

こんなに美しい春の朝。なぜこんなに寂しい夢を見るのだろう。 優しい青空に新緑がそよいで金色の光にきらきらさざめいていた。(けれどその恩寵は、胸の中の寂しさに届かない。) 窓辺の小鳥に聞いてみた。朝の陽射しが彼女を金で縁取った。小さな頭で首を…

キリン5 王様

横断歩道にキリンが落ちていた。 静かな冬の夜、星は静かに時間をながれてキリンにかかる。僕は思い出す。夕暮れには天使の髪の毛みたいな淡く細いハニー・ムーンがかかっていた、その夜。(ほのほのと薄い紫がたなびいていていたのだ。確かに、ほんの数時間…

映画という表現

最近ジミジミと映画観たいな衝動。(というかウヰスキー注いだポドショコラをすするときのお供。)(ふつう逆だが。)ということで動画サイトを覗く。 ボヘミアンラプソディーは挫折したが(よく考えるともともとクイーンがダメだったのだな自分)まあ手堅く…

エドワード・ケアリー「おちび」

「アイアマンガー三部作」(レビュー記事はこちら)では、まずは設定のあまりの想定外な独自性、とっつきの悪さ、陰惨で奇妙な世界観にいささか鼻白んだ。が、やがてそれらを迫力のリアリティでなまなましく描き出す凄まじい筆力と怒涛の物語構成力に引きず…

梨木果歩「沼地のある森を抜けて」。再読記録メモ

壮大な糠漬け小説である。うねるように押し寄せるこの梨木香歩節に翻弄され引きずり込まれ圧倒され打ちのめされる、その至福の読書空間体験。 …すべては、糠床から始まった。主人公が叔母を亡くし、家宝の糠床を継いだところから物語は始まる。 やがて、日々…

コロナワクチン

ということで高齢者向けにコロナ対策ワクチン接種が始まったわけですが。 何故に自力であの激烈な競争率及び困難とエラーだらけのインターネット申し込みを高齢者自身が行わなくてはならぬハードルの高さを設定しているのか。 最もそれを必要としている層に…

クラシック喫茶「でんえん」再訪

本日はどんより曇天から雨模様。五月なのに肌寒い。 ということで鬱々と地元クラシック喫茶、田園再訪。初めての時は友人と一緒だったのだが今日は鞄に読みかけの文庫本潜ませてひとり潜入。相変わらずの佇まいが嬉しい。ドアを開けるとタイムトリップ異空間…

我々はJKだったので、お茶会をした。

我々はJKだったので、お茶会をした。 初夏の陽射しのあふれる、秘密の庭園のようなM子の自宅の庭が会場に選ばれた。赤いギンガムチェックのクロス、M子とっときの野薔薇のお茶セット、持ち寄りのお茶とお菓子。 ひな祭りには期末テスト前週間、部活も禁止さ…

チョコレート・コーティングと真理の相対性

チョコレート・コーティングには独特の魅力がある。晴れた日曜の朝、焼きたての幸せの香りのするのパン屋でチョコレートをとろりとかけたデニッシュ・ペイストリーをトレイにのっけていて、私は非常に幸福な気持ちになった。 コーティングされたチョコレート…

村上春樹「騎士団長殺し」 イデアとメタファとは?

(ということでコイツの再読にかかったワケである。) *いつもの春樹パターン 冒頭、突然妻に別れを切り出され、それまで当たり前にずっと続くはずであった日常を失い、もはや失うべきものを持たなくなった「私」は家を出て、ひとり山の上に住んでいる。 周…

パンとインド神話

今日は青空陽だまり春うららびゅーちふるさんでー。 のたのたと街を歩いてビアードパパの前でシューの焼ける香りに包まれ、焼きチョコシューやパリブレストなんかを眺め、その隣の和菓子屋の鶯餅や道明寺、蓬餅のやわやわと雅なそのお姿を眺め(関東長命寺風…

金色のさかな

ノックの音がした。部屋の扉を開くと、金色の三日月がひかっていた。 ドアの外に三日月?僕は瞬きする。ゆらゆらとドアの前に浮かんでいたのは金色のさかなだった。 きれいに光るつるりとなめらかなその肌合いは鱗というよりは透き通る貴石で、それが月の光…

穢れの町、肺都(エドワード・ケリー アイアマンガー三部作・第二部及び三部)読了

ということで読了いたしました。第一部読了時点のメモはこちら。 一旦ハマったらかなりの長編ではあってもガアと一気読みしてしまうものすごい力業で構築される壮大な物語ワールド、その世界の躍動感に驚嘆するばかり。 いや~なにしろものすごいスペクタク…

「アフターダーク」村上春樹

さて。 毎朝悪夢と絶望の中に目覚め、少しずつ少しずつその日生きるための燃料を取り入れて辛うじてその日その日の平常心を己の中に育て直してゆく。朝の透明な空から、清浄な空気から、日々の暮らしに伴うルーティン、その動きからその中にひらけてゆく風景…

堆塵館 <アイアマンガー三部作>

さて、「荻原規子が夢中になった長編ファンタジー」という雑誌の記事があったというワケなんである。うむむ、あの希代のストーリーメーカー荻原規子さんが。 これはきっと間違いないに違いない、と私が思ってしまったのも無理はなかろう。 ということで小説…