2024-01-01から1年間の記事一覧
ムーンライダーズの「アケガラス」の歌詞である。 「回る地球と ぼくは自由♪」 きらきら輝く晩秋の陽射しに静かな家々の瓦屋根を眺めていたら、幼い時の屋根の上でお昼寝の夢を思い出した。 無限の豊饒を孕んだ空間と自由と解放が、時間が、空と屋根と自分だ…
最近やたらと夢を見る。朝起きられなくなってきた。 去年なのだ。母の最期のブログが11月14日。いよいよせまってきて、今私の脳はずっとあの死に穢された暗い日々をなぞって生きている。どんどんだめになる。 最後にうちで倒れたのが11月15日だった。…
灯りの灯り始めた夕暮れの街の風景が好きである。 一日の終わり、人々は帰宅の途にある。 そのほっとした解放感に満ちた空気。レストランや居酒屋の魅惑の灯りに吸い込まれてゆく人々。夕餉の支度のためのスーパーで買い物にいそしむお母さん、お洒落な店で…
10月も半ば、日曜日だ。 ああ、待ちわびたこの穏やかな秋晴れの青空。ほんによいお日和だった。 これはもうあの公園に行きたいでしょう。やれどっこいしょ、と、電車に乗る。久しぶりに懐かしい街、吉祥寺井の頭公園へ。 穏やかな休日昼下がりの中央線であ…
安房直子さん愛好サークルの方々に、勉強会があると声をかけていただいた。で、この作品がテーマになっていたんである。 この機会に、また安房直子さんのこと、ゆっくり考えてみたくなった。 私の大切なバイブル。 しばらくテクストには触れていなかった。(…
深夜だ。 ベランダに出ると湧きあがる静かな秋の虫の合唱に包み込まれた。 頭上にひとつ、ぼうっとけぶるようなあえかなお星さま。るうるうと様々の音色の鈴を振るような虫の声が深みを湛えたハーモニーを奏でている。 それは大地からうまれた音楽のように湧…
在宅業務なのかな、シングルマザーだったりするのかな。小さな女の子を連れてその午後のカフェ。ノートパソコンを取り出して、珈琲のマグを前に、眉根を寄せてカタカタとパソコン作業のお母さんだ。 天井の高い広々とした居心地のいいカフェである。大きなガ…
夜を吹き荒れたその嵐が去った翌朝、いきなり季節の色、光と影の色が変わっていた。 そして風の匂い。 …夕暮れもぐんぐん早くなる。五感で季節を感じる。 気温は相変わらず高いけど、やはりこれは残暑。百日紅もひまわりも萎れ始め、濃い暴力的な生命の輝き…
第一声。 …やっぱり素晴らしいな、川上弘美。 最初入りにくかったけど、「七夜物語」はむしろこの作品のために書かれたのだ、とすら思える。 例えば(ちょっと出来合いの設定を感じさせるありがちなファンタジー異界への参入方法)(本を読むとその世界に入…
晴れた日曜の昼下がり、陽だまりの図書館は至福空間だ。 日曜の図書館ビトたちが静かにそれぞれの営みを営んでいるあの安らかな異次元空間にすっぽり包まれる。朝方の悪夢ひきずって世にも不幸な気持ちだったのにいきなり輝くような多幸感に包まれてしまうと…
昨夜は古い友達と近所のお気に入り居酒屋で納涼暑気払い。 暖簾をくぐれば別世界、嗚呼心ときめくこの風景… 思い起こせば大学時代。私はゼミで、指導教官、我が恩師から居酒屋文化のときめきを学んだんである。(いやもちろん学内での先生の授業も素晴らしか…
パルメランの夢、だったかなあ。あの世界のことをふいに思い出した。そうしたら、私は私の大切なものを忘れていたのだ、と、切なくなった。忘れていたことすら忘れていたのだ。 本のことである。井辻朱美さんの本。 私は井辻朱美さんのファンタジー世界の感…
「ナルニアを失う」どこかでこの言葉を目にしてから、その印象の深さに打たれ、なんだかずっと引っかかっていた。 (もちろん「ナルニア国物語」シリーズとはC・S・ルイスのアレである。衣装ダンスの奥に広がる異界。壮大な世界創生から滅亡までの物語。本当…
この上なく澄んだうつくしい夕空の光の中をバイクで走りながら、こんなうつくしいそらと風景は生まれて初めてだ、なんて幸せなんだろう、永遠にここを走り続けていたい、と思っていた。 そうして、思った。 いつだって本当は、毎日新鮮に「今」が一番幸せな…
炎暑に揺らめく日も、街はまたよいものだ。 灼熱の光と熱に焼き付けられた世界は奇妙に鎮められ、目の前の風景や現実が砂漠に浮かぶ幻のように感じられてくる。日曜日の夢。そしておおきな真夏の記憶が幻のようにそこに重なる。猛烈な暑さのこの季節はここで…
金曜日。一日中どんより暗い世界、ざぶざぶしとしとしとしと降り続く雨。雨はキライだ。 びしょびしょひんやりもわもわ梅雨空。しとしとと降り続く雨にけぶる世界。滴る緑に染まり、しんしんと静かな公園を抜けて小さな珈琲屋へ。 湿気の中、ドクダミの匂い…
高校時代の始まった春に、ここに来た。新緑のきらめき出す、うつくしい日だった。 新しい世界、新しい広がり、新しい友人たち。ほのかな期待と不安に輝く緑と金色の世界。15歳の始まりの世界。 それから、一体幾度私はここに来ただろう。この変わらぬ風景の…
お天気冴えない心も冴えない、というときは、地下二階のこの隠れ家図書館に潜り込む。入り込んだ瞬間、その特別に守られた時空に包まれた瞬間、ほっとする。静かな静かな秘密の図書館、自分だけのこんな隠れ家あるといいなあ。そしてこんな日こんな場所にふ…
今年でこの薔薇園も見納めかと思ってね。 見事な薔薇園、月の原ガーデン。写真ではこの風景に包まれた瞬間の気持ちは伝わらない。 ふわりと空気と光の色が変わる。透明な壁、時空の壁を通り過ぎたときの感覚。その向こう側には、永遠の秘密の花園。 夢の中の…
決してあってはならないことなのですが …という枕詞が気に入っている。大変に使い勝手がいい。 これは、図書館で検索によるとそこにあるはずの本がない、という事態に出会ったとき、図書館のスタッフの人と二人して大捜索した後の、彼女の苦しげな表情から搾…
両親を一遍に失った後、怒涛のような対外事務関係一連のイベントも大方の山を越え、ウチウチ的にはクライマックスである。遺品整理。 その遺品整理のうち、(これら作業はもちろんそのすべてとっても大変なんだが。)(いろんな意味で。)最も辛いことのひと…
その冬、幾度か寝たきりの父の見舞いをした。 母の死以後、ふいっと人生を投げだしたように突然の認知症から身体の老化の同時進行、すべての彼の生命の力が急激に衰えて意識も失い、病院に入ったのだ。 ただ点滴で生き延びている。ベッドの上でぼんやりと水…
両親二人分、無事納骨してきたよ。 冷たい風轟々だったけど、抜けるような青空素晴らしくて真っ白な富士山を見晴るかす、そんなお墓だった。 どうしてだろう。この日まで富士山のこと誰も気が付かなかったのだ。 暗い土の中に埋められてゆくあの白い壺の中身…
今朝は朝から降り続くしとしと冷たい真冬の雨、世界中冷たく薄暗い雨に降り込められて限りなくひとりの部屋の中。 意識の楔を手放したうとうとと寝苦しい浅い眠りの中で、無防備な意識の核子供のままの寂しさと恐怖にとらわれた怖い夢ばかり見ていた。 早朝…
寂しい寂しい寂しい。立ち直れないんじゃないかと思う。 生まれてこなければよかったとは 絶対思わないし思ってないはずなんだけど、寂しさはあんまり厳しい。 生きるのも死ぬのも厳しすぎる。