28日水曜日、目が覚めると開け放った風の中に一筋の懐かしい香り。
東京の金木犀が一斉に香りだした。
開花解禁日が街の金木犀組合で決められてるんだな、きっと。植物根っこを伝わるラシネーインターネット電子信号か空気中ホルモン放出かなんか未知のネットワーク伝達方法があるに違いない。フライングするやつはきっとアウトローなハズレもの。
ロクシタンにも季節限定金木犀のコロンやハンドクリーム特設コーナー(ちいと強烈)ルピシアにも金木犀茶。
キャフェクリムトには、キンモクセイのラテまであったぞ。おいしいんかしらん…同じ季節限定ならメープルマロンラテのが間違いなさそうだけど、ついふらふら頼んでみたくなる気持ちはわかる。
甘い甘い金木犀ワイン、桂花陳酒(黒煉胡麻と組み合わせるとココナッツプリンなんかにあう洒落たデザートソースになる。)や昔これの香りの香水みたいなガムがあったことや、そして何よりも安房直子さんの「花のにおう町」の妖しさを思い出す。
少年が胸の中のヴァイオリンが鳴り続ける切ない懐かしさに捕らわれ、オレンジ色に輝く自転車で街を駆け回る金木犀の少女たちに魅入られ攫われそうになる夢のような、そして危険な一週間のお話。
わしゃ個人的には梔子の香りの方がずっと好きだけど、あんまりにもかなしく明るい秋の光、風や空の透きとおった澄明さも相まって切ないと言えば切ない香り。桜のような潔い華やかな一過性が我々の
国民性を捉えるものなのやも知れぬ。