酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

BLからZLへ

少女漫画とBLについてはなんだかんだ言いたいことがあってちまちまメモしたりしてたんだけど。

 

…昨日か一昨日か、ツイッタ界隈で「美術館のちょい悪オヤジ」の話題が盛り上がっていた。モテたいオヤジはうんちく身に付けて美術館女子を狙え、っていうやつな。

まず噴出していたのはそのダサさと低能さ、卑しさ、無自覚の暴力的ハラスメントへの激しい非難である。それはもうウットリするほど見事に完成され、知性に溢れた美しい批判のかたちであり、感服するほど気持ちのいい激しいディスりっぷり(変な言葉だな。)であった。

で、これを完膚なきまでに叩いた後の第二ステージとして立ち上がるのが発展二次創作である。この辺の笑いへの横滑りっぷり、このトコトン笑いのめそうとする貪欲さが好きなんだなあ、ツイッタ気質。自分自身をも含め、何もかもをパロディにする、なにもかも笑いへとずらす物語化への視点を持つ。その江戸庶民的な逞しさが好きだ。ものすごく大切なことだと思う。真面目に。

で、どう発展したかっていうと、基本、二通り。

まず、無知だけど知的な雰囲気大好き女子に付け焼刃蘊蓄たれて感心されて尊敬されてモテちゃって食事に誘っちゃってっていうプランが、美術館オタク女子に激しい切り返しを受けて撃沈するっていうストーリーのバリエーション。これは、社会的に暗黙の了解として男性社会における下位レヴェルにおかれ蔑視されてきた女子からのルサンチマン系譜である。

もう一つが、BL好きクラスタから発展した、女子ではなく男子同志の美術館でのナンパ物語変奏。「ボーイミーツボーイ@ミュージアム」である。こっちの突き抜けたぶっ飛び方が実に素晴らしい。ルサンチマンなんぞない。だけど、斜め上反応的でありながら、それはあざやかに男性原理を笑いのめし、性の消費を逆転させている。

そして更に言えば、笑いながらもそれを愛おしむ、親密な秘密共有サークル内で成立するのびやかなあたたかさがある。オタク自覚者同士に特有の共犯感覚。もちろんそれは発端となった元ネタの生じた社会原理への揶揄が基盤となっている。(これは重要なポイントなんではないか。)

…具体的に、その二次創作内容なんだけど、これが結構渋くてイイんである。ちょい悪オヤジイメージから発展しただけあって、BL(ボーイズラブ)というよりはOL(オヤジラブ)、いやむしろそれらを既にはるかに越えたZL(ジジイラブ)ジャンルの形成へと進化したらしいのである。時代は既にZL。もうこのあたり花盛りで素晴らしい。最も受けているのは「ちょい悪じじいとガチ教養じじい」絡みヴァージョンである。

なんかね、笑いネタなんだけど、ここでは、笑いっていうよりイイんだな、深いんだな、じんわりあったかいんだな、純愛、友愛。ZLってのは。(「最高の人生の見つけ方」結構好きなんである自分。)

BLにもやっぱり通じるとこがあるんだけど。…ウン、やっぱりBLについてはもうちっと語ってみたいな、これは、愛(エロスにしろアガペにしろ)を当事者としてではなく物語として眺める、というレヴェルで嗜好する感性だと思うから。これは後日の課題。