酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

真珠のドレスとちいさなココ―Slaaf Kindje Slaaf

真珠のドレスとちいさなココ―Slaaf Kindje Slaaf

真珠のドレスとちいさなココ―Slaaf Kindje Slaaf

これはひどい。ぞっとする。あまりにも怖い。

マリーアが、12歳のお誕生日に愛する家族からプレゼントされる、真珠のドレスや美しいアクセサリー、豪華なごちそうの素晴らしいお祝いパーティー。そして、パパからは、初めての専属の小さな奴隷の少年。

植民地時代の奴隷制度の中で、人を人として感じることのできない精神性の愚かしさが醜い残虐さとしてあぶり出される。

マリーアが無邪気に語る風景は、楽しいことや嬉しいことの日常、ごく普通の少女らしい希望や未来への夢、ほのかに心を寄せる男の子への思い、そして、それと同時に描き出されているのが、人を人と思わない奴隷への虐待の日常。その悪気のなさなのだ。

「おばさまからのプレゼントは、(奴隷用の)ムチ。残念、頂いた素敵なハンドバッグには入らないわ。」といった具合だ。

両親や大切な人への愛情や優しさや気遣いと同時に成り立っているその残虐さ、その矛盾への疑いのなさ、そのあまりにも自然な日常性。虐待されるためにある存在への疑問のなさ。鞭打たれる悲痛な叫び声を聞きながら平気で「夕食のデザートはとってもおいしかった、もっと欲しかったわ。」などと記述する精神の在り方。

これはもちろんデフォルメされたカリカチュアではあるが、万人の心の中にありうるひとつの要素なのだ。その違和感、そして空恐ろしい恐怖感が、この本のキモである。

非常に読後感が悪いが、優れた作品だと思う。