「ほんたうにあなたのほしいものは一体何ですか」
「銀河鉄道の夜」でジョバンニが鳥捕りに聞きそびれた問いである。
幾度も幾度も、いつでも、この問いは私を問うた。
…キヨシロやアッコちゃんみたいにね、「欲しいものはたくさんある♬」が実はホントだったりもするんだけどさ。
きらめく星屑の指輪、寄せる波で拵えた椅子、世界じゅうの花集めつくるオーデコロン。
そうして、あなたの心の扉を開く鍵。
でもさ、今はとりあえず、薬が欲しい。「ほんたう」とはズレるとしても、これだってホントウだ。真理なんてものはいつだってズレたところにしか存在しない。
一粒飲むと、何の苦痛もなく、すうと優しい眠りが訪れて、そのままここに戻らなくてもいい。確実にね。…そういう薬。
もしできるなら、その最後のときは、ものすごく幸せな思い出ばかりで心がいっぱいになるような、脳内快楽ホルモン分泌が刺激される成分が含まれていてほしい。
今すぐに使う勇気はないけど、宝物にして、お守りにして、いつでも身に着けておく。泥酔した勢いで飲むんだな、きっと。
だけどほんとにさ、もしかして、これがあれば、こういうお守りがあれば、もう少し強くなれるかもしれないと思うんだ。こんなにどうしようもなく追いつめられなくても済むようになるんじゃないかと。
今のこの国で、一番需要があるのはこれなんじゃないかしらんなどとちらっと思ったりもするんだな。