グース・ガール―がちょう番の娘の物語 (ベイヤーン国の物語シリーズ)
- 作者: シャノンヘイル,Shannon Hale,石黒美央,せのおゆり,武方恵美,渡邊真弓,中原尚美
- 出版社/メーカー: バベルプレス
- 発売日: 2011/01
- メディア: 単行本
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エナ―火をあやつる少女の物語 (ベイヤーン国の物語シリーズ)
- 作者: シャノンヘイル,Shannon Hale,石黒美央,西沢有里,上山さとこ,中原尚美,柴田真木子,須田智之,谷口みはる
- 出版社/メーカー: バベルプレス
- 発売日: 2011/10
- メディア: 単行本
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「グース・ガール」
ものすごく立派な物語原型的エンタテイメントだと思う。
世間知らずの純真な王女が、したたかな侍女に裏切られ、異国でがちょう番として、友情と社会と愛を学んでゆく。勇気と友愛で、真実と愛と王女としての資質を勝ち取ってゆく。
おしん、とか、シンデレラ、とか、ティピカルな少女マンガ的に、優れた力技。問答無用に面白いんである。ほんの少しの魔法の要素、魅力的な世界だ。
そして、続編、「エナ」
ベイヤーン国物語シリーズ第二作。前作主人公だったアニイの、親友エナが、今回の主人公。
アニイは風の言葉を持ち、エナは火の言葉を操る能力を持つ。
それは、風と火を支配する力であったが、同時に、その力に飲みこまれ、風と火に翻弄され支配され焼き尽くされる両刃の能力であった。火はあたたかな生命であり、同時にそれを焼き尽くす滅びのエネルギーであったから。
この、己のアイディンティティ、内部が外部(風と火、自然の有するエナジー)の力に飲みこまれる、その危ういバランスと危機の視点と描写が素晴らしい。
言葉の力を持つ人には、人を言葉で操る能力と持つ者と、自然の言葉を理解する者とに分かれる、という物語の前提がある。そして、この物語は一貫して、人を操り利己と野心に突っ走る政治術に長けた者たち、搾取する側と、アニイやエナ、搾取される側、自然と結びついた力を持つ者たちとの闘いを語ってゆく。
心理戦、言葉の力、国と国との男たちの戦争の中で、自然をつかさどる力を持つ魔女として二人は狙われ翻弄され、闘う。そしてまた、その力自体に飲みこまれそうになる闘いとの二重の苦しみを生き抜き、試練を越え、すべてを勝ち得るラストは快い。
薬と心理戦によって混乱してゆくこまやかな心理描写が実に素晴らしく、焼かれるような苦しみや、愛、友情の純粋さと気高さが、じんと胸を打つ。
第三、四作めもあるそうだ。早く翻訳でないかな。