酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

2015-01-01から1年間の記事一覧

初恋認定記念日

いつの間にか高校時代の淡い初恋のことを考えていた。恋なんてしたことはないような気がしていたけど、今日の今日、初めてあれは恋だったのだと認定したんである。歴史ごと、その恋は今日創造された。甘酸っぱい切ない優しい憧れの風景。あのひととの語らい…

眠れぬ夜、春樹のヤミクロ

深夜の三時、おやつのカステラの時間になってしまったのに眠れない。仕方ないので網を編む。本を読む。あれこれ考える。 どうせ酔っぱらいなので大したことは考えられない。だけど忘れたくない。大した人間ではなくても生まれたからには生きるんだし大した考…

恋とミューズ

今日は一日恋について考えていた。恋という感情意識が日常をすべて、ひいては世界全体を塗り替えるという現象について。そしてあるいは芸術家にとってのミューズという存在について。どんなルーティンの中にいても。今までその日常のきれぎれ、単なる客観事…

知と不可知

眠い。知るは正義というようなことを信じている。だがそれは己が知らぬということを知るという不可知論、パラドックスを孕んだ知のことだ。それに何の意味があるだろう。悟るということのパラドックスに似ている。悟ったと思った瞬間、それは悟りではない。…

「菜の子ちゃんと龍の子」富安陽子

菜の子先生シリーズの小学生ヴァージョン。座敷童の学校版、学校怪談ならぬ学校神話とでも呼ぶべきジャンルである。和製メアリーポピンズを思わせる、しゃきしゃきピシピシした菜の子先生の「生まれながらの先生」的キャラクター、やたらと学校の規則を大切…

日曜日のデパート

新宿の、喧噪の。初夏の輝きの中、日曜日のデパート。晴れがましい街、デートの若者、家族連れ、電車に乗って街に出て、夢のための買い物をするひとたちの楽しい休日の空気に染まる。昔嫌いだったデパートの化粧品売り場、しかし今はそれを楽しむ女性たちの…

「おーばあちゃんはきらきら」たかどのほうこ

おーばあちゃんっていうのは、小学校一年生のチイちゃんのひいばあちゃんのことだ。おばあちゃんのうちのはなれに住んでいて、ときおりおばあちゃんと一緒にチイちゃんのところに来たり、チイちゃんが遊びに行ったりもする。チイちゃんはおーばあちゃんが大…

春が来た

朝、ごみを捨てに行ったついでにカメラを持って中庭の桜を撮ってきた。朝陽の茜と金の蜜に浸されたこの世のものとは思われぬ春休みの桜。洗濯物も布団も春風にひらひら。寝不足の綿袋みたいな心身引きずって朝陽のあふれた世界。コンビニエンスストアで春の…

卒業式

卒業式がたくさん歩いていた。晴れがましい袴姿。誇らしげな付添お母さん。 自分のあの頃を思い出し感慨無量。戻りたい?やり直したい?NO。だけど。YESかもしれない。もしも、もしもの墓場の物語を考える豊かさ。

目覚めるときの悪夢だまり・ソメイヨシノ開花

夢、或いは無意識集合体から目覚める短い道筋の途中に「悪夢だまり」があるのだ。そこにハマってしまったまま目覚めた朝。絶望に浸された朝。その日一日はたいていダメだ。今朝はニアミス、危なかった。もう何もかもダメだと思ったのだが危うく壊滅的に沈み…

バイクにガソリン、花咲く町

ガソリンスタンドまでいって我がマシンに魔法のオイルを補給する。この数日の温かさを待ちかねたように街じゅう一斉にさまざまの春の花が咲き始めた。マンション中庭のソメイヨシノも一触即発。 今夜はあのひとは帰ってこない…なんなんでしょうこの安心感。…

アンティカファルマシスタのチュベローズ

カサブランカも素晴らしいけどヒヤシンス・チュベローズ・水仙もなんて素晴らしいんでしょう…甘いだけでなく、深呼吸したくなるような、凛として清々しい清潔さ。早春の花屋の花束に顔突っ込んだ気持ち。午後はこれに包まれて春ぼらけの街をバイクで走る。女…

聖パトリック祭 姉誕生日 母来る

昨夜一晩降り続いた雨が、春を連れてきた。 もう人生ダメかと思っていた絶望感からの復活に兆しを感ずる朝。しばらくぶりの青空、ぽかぽか春の陽射し。 杏ブランデーを仕込む。テレビの上のふわふわ兎を春のことりとシロツメクサに取り換える。 母と駅ビルの…

「夕凪の街 桜の国」こうの史代

こうの史代は広島出身者なのか、とプロフィールを見て、その生まれ育ち、そのアイデンティティに刻まれる土地の意味のいみじさを思う。方言の確かなネイティヴ感もさすがである。母の田舎が広島で、一時期住んでいたせいもあり広島には縁があるのだが、バリ…

「海うそ」梨木果歩

幾重もの喪失。 さまざまの喪失の物語を重ねる旅なのだ。時空を超えてゆく旅、さながらロードムービーのような旅の道行きの物語構成。これは、読者を今ある現実日常世界から、その宇宙的な道行への深みへと巻き込み、主人公と共に物語世界への旅に誘いこむた…