酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

「君たちはどう生きるか」吉野源三郎

高校入学前の春休みの課題図書であった。
入学早々これの感想文を提出するのが新入生の入学儀礼。我が母校の毎年の習わしであった。

ので、少なくとも私の周辺の世代の同窓生は全員これを読んでいる(はず)。

 

ということなので、これの漫画化されたものがいきなりベストセラーになっちゃったってんで懐かしく思い出してしまったんである。そういや結構どっぷりよかったような気がするな、切れ切れに覚えている断片は、結構自分の人生に食い込んでたりするかもな、というような記憶を呼び覚まされ、読み返したくなった。コペル君。

連休、実家にいる間にさささっと流してみた。

で、がつんとやられた。

 

こういうのって、精神が弱ってるときには特にヤラれてしまうのだ。
好きなのだ。この直球ストレート、陳腐なほどのミエミエの教育的な例えばなし、まるで道徳の教科書のような出木杉君のような不器用なほどのまっすぐさ。けれどここにはカケラほどのあざとさも衒いも押し付けも上から目線もなく、ただただまっすぐで深い知性と希望と祈りと明るい優しさがみちている。王道をゆく。NHKと朝日新聞その理念。完璧な理想の大人のおじさんに導かれるお育ちのいい頭のいい心の優しい、そしてきちんと弱さももっているひたすらいい子の中学一年生コペル君の成長譚。次世代に託す祈りがみちている。(濁りへの視線はない。あるのはノブレスオブリージュ。)

自分があざとさとひねこびれと外連味とエゴと罪業のカタマリなものだから、こういう眩いものに対する憧れが人一倍強いのだな。…井戸の底から輝きの天をかなしく仰ぐ修羅である。

あとね、やっぱり時代の匂い。少年たちや女学生たちの独特のキャラクタライズと語りくち。素朴さ。あの昭和の時代に満ちていた時代の空気の匂い。(初版は1937年、戦後改変され出版されなおした。)そのときに夢見られていた未来のもつエナジイへの錯綜した郷愁。これは未来への郷愁なのだ。そして、普遍としての祈りと。

今の時代にこそ、と思われるいたましい言葉があふれている。

この書が、漫画化されたという機会をもって(漫画がどんな風に解釈されたものであるか未読ですが。)今の時代にベストセラーになったことを私は福音として受け取る。

 

…アカン不安定になっていると涙もろくなってしまう。幾重にも重なったのすたるじやという個人的な思いによって、けれどそれだけでもなく、目頭が熱くなるようにジンときてしまったのはそれほどナイショではない。


…ところで高校入学前の自分、これにどんな感想文書いたんかねい。まったく覚えてないや。(明日TVで特集やるみたいなので録画予約ただいま完了。)

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