酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

不幸と孤独は悪である。

人間は不幸になってはいけないのだ。 孤独な不幸は悪である。 なぜならば、全世界への、関わるすべての相手への恐怖と憎悪、感情的に反射的な反感「敵認定」はすべて孤独な不幸に起因するものであり、それは結局は、戦争の根源、不寛容の根源、多様の否定、…

うつくしくないごみ、そしてうつくしい生きかた

こないだ友人がバカンスに出かける前に,まあいらっしゃいなあ、などと愛を持ってご招待してくれたのでやれありがとうと、珈琲をご馳走になってきた。 もにゃもにゃとあれこれおしゃべり。 ここでふと課題が提出される。 近所のおうちのゴミ置き場のゴミがカ…

晴れた夏の朝

晴れた夏の朝。 母が抗がん剤治療のために入院する朝。荷物をもって車の前まで見送った。眩い朝、見送る車が強烈な光の向こうへと遠ざかる。 昔見た風景のことを思い出した。 *** *** 人々のいつもの通勤電車。けれどその朝は日常から少しだけ、いや、…

森見登美彦「聖なる怠け者の冒険」

まさか森見登美彦のコレを再読することになろうとは思わなかった。 独特のナンセンスと切れ味の鋭いエスプリ、自虐的諧謔に満ちた文章の饒舌っぷりは、私にとって肌に馴染むまでにちいとハードルが高いのだ。 「ペンギン・ハイウェイ」の、少年たちの目に映…

「ペンギン・ハイウェイ」森見登美彦

論理。迷宮。ナンセンス。(「鏡の国のアリス」から謎の怪物ジャバウォックのモチーフ) 根源。宇宙。不可思議。研究。 世界の果て・理不尽・虚無・死或いは死後未生 *** *** 舞台は、郊外の小さな駅のベットタウン、平和な新興住宅地だ。ここに、ある…

夏の週末。カフェ。

猛烈な陽射しの夏の午後だ。土曜日、昼下がりの駅前カフェ。 狂ったような陽射しに、ほたほたと落ちる汗、麦わらを透かして光は私の顔を陽炎のように彩り、アスファルトからゆらゆらと立ち上る熱気がその陰影を揺らめかせる。気が遠くなりそうな懐かしい遥か…

ねじまき雲 カフェの効用

「1時間半毎に注文必須」・「3名以上お断り」・「撮影制限有」・「店主本位の店なので、守れなかったら退店してもらう」 …この店、禁止事項だのなんだのの注意書きながめてるとだな。なんだか高飛車で偉そうで怖い人が出てきそう、いかにもワシは客選ぶぞの…

阿佐ヶ谷 (サーティワン)

通りがかったサーティワンの店先を眺めていて不意に思い出した。(今月スペシャルフレーバーはキャラメル抹茶オレ) 初めての街で初めての買い食い、初めての友人からの奢り。一度に何人もの取り巻きの友人たちに専門店のアイスクリームを奢る中学生なんて奇…

戦争というのは非常に怖い

戦争というのは非常に怖い。怖いものには近づきたくないんだが大抵怖いものは向こうからやってくる。暴力は向こうから襲いかかってくる。理不尽は向こうから襲いかかってくる。 不安と恐怖、そして寂しさに耐えきれず憎悪と暴力に変換する人間というのはいる…

二月の日曜日

二月の日曜日。ひとりでぼんやりとガラス戸の朝陽の蜜の中サボテンを眺めていた。幸せだった陽だまりの日曜日の記憶の中にいた。非常にかなしく幸せな至福の朝であった。 穏やかに降る朝の光、静かな二月の早春の光。 光の春。柔らかな、そして力づよい新し…

物豆奇・「ユリアと魔法の都」辻邦生メモ(銀河鉄道的なるもの。)

昨日、どんぐり舎に行こうとしたら満席だったので物豆奇へ。(ほんの2メートル先を歩いてて目の前で店に入っていった老夫婦に負けたのだ。最後の空席、そしてしかもとても可愛い窓の近くの居心地のよさそうな大層よろしい感じのとこだった。ワシは悔しかっ…

「村田エフェンディ滞土録」梨木果歩

ディスケ・ガウデーレ。楽しむことを学べ。 鸚鵡の生命力とエスプリを根こそぎ奪い取り、魂をうちひしいだ喪失の痛みから、その目の輝きを取り戻させたのは、村田のこの囁きであった。戦争前、嘗ての日々の、そのかけがえのない平和と友愛が当たり前に存在し…

梨木果歩「家守綺譚」補遺

これとこの続編の「冬虫夏草」の感想は最初に読んだとき、とりあえず考えたこととして記事は書いてある。それなりに一生懸命。 ここね。 コレでまあほぼ、私なりにわたしにとっての「冬虫夏草」の作品としてのひとつの読みの骨組みは、そのエッセンスのとこ…

チョコレート・ドーナッツ(そしてチョコレート麦酒)

普段、私はドーナッツに興味を持たない。 シュークリームやチョコレート、和菓子に洋菓子、菓子類すべてに尋常ならぬレヴェルでの深い愛情と激しい執着を持つ私が、である。(アラビアンスイーツやアジアンスイーツ、流行りのエスニック系もあまり射程には入…

ブラッドベリ「華氏451度」

寒さに滅されそうになりながらブラッドベリ「華氏451度」に取り憑いている。年末に火星年代記をレビュしたとき、こんな風に予告しちゃったしさ。 ~さて次は「華氏451度」にいこうかな。「100分de名著」で一通りのあらすじや指南役の先生の解釈を聞いたけど…

通俗とアカデミズム(100分de名著ヘミングウェイメモ)

最近M子とよく話す。 *** *** *** 100分de名著、ヘミングウェイスペシャル録画視聴了。回によってのあれこれの視点は散らばって、私の興味はそのあれこれに当たったりはずれたり。とりあえずすべての箇所につかみ取るものはある、などとひとまず思った。 …そ…

「火星年代記」レイ・ブラッドベリ

以前、安房直子さんについて書いたこの記事の最後で、ついでにブラッドベリについていつか、と予言していたので気になっていた。まあとりあえず今回の主旨はアレの続きである。 *** *** *** 最近いろいろと機会があってM子とよく話す。 旧友である。高校時代…

ビーフシチュー

既に早12月、クリスマスも解禁の、キンと冷え込む星空はあくまでも清冽に美しく、夜をかけ宇宙をめぐる壮麗なるオライオン。 …それにしても寒がりにはいささか厳しい冷え込み厳しい冬である。 *** *** *** とういことでこの季節、なによりのごちそうは、おな…

安房直子「ハンカチの上の花畑」再読。アイデンティティ崩壊の向こう側に繋がる異界(読後感メモ)

さて、ちいと前の話ですが、9月9日。あんまり騒がれないけど、重陽の節句だったんである。 日本では3月3日や5月5日が有名なのに対し、知名度は低いけど、本場中国では実はけっこう重要な節句であるらしい。陽が重なって重陽。めでたい、と。 重陽の日って何…

100分de名著「戦争は女の顔をしていない」 2021 8月放映

TV

興味深く観たんだけど、歴史の中の、その事実の残酷さ、恐ろしさ、深い痛ましさやるせなさにショックを受けたんだけど、そしてこの番組は確かに相変わらず深い知性と忍耐力、実力を備えたバックボーンを感じさせる優等生なつくりなんだけど、なんとなくあれ…

ファイザーワクチン接種、ニーチェの真理

さて、新型コロナのワクチン二回接種ミッションクリア。副反応的なるものは(二回目の後特に)かなり辛いものではあったがヤマは越えた。 で、免疫細胞というのは大体ワクチン二回接種後二週間で効果が充分発揮されてくるという。 …ということは、私の細胞が…

2021 お盆 鈴木慶一

最近とみにぼんやりとしたくたびれ具合が心配になってきた父である。TVの前でニュースや国会中継なんか眺めてはぶつぶつと文句を言っている。酷い時代になっちゃったからな。でもね、脳が加齢のせいで気力も萎えてきて記憶の前後関係とかあれこれぼんやりし…

小森香折 エゼル記

何故この叙事詩のような神話のような、荒唐無稽な設定の幻想物語がこうも私の心を打ったのだろう、感情を揺さぶったのだろう、とずっと考えていた。これは情趣に満ちた風景描写や幻想の美しいイメージからくるものではあるんだけど、それだけ、と言うことで…

流星シネマ 吉田篤弘

ということで様々なモノの渦巻くコロナオリンピックの騒ぎの中、すっかり脆弱な心身のバランスを崩してへばってしまった自分、ただひたすら身を守り心を鎮めるためにこんな本を開いてみている。実家に逃げ込んだのだ。 で、内容である。 …吉田篤弘はやはり吉…

土産

近所に住む古い友人が、長野の山奥から戻ってきた。(一泊だが。) 隠れ家旅館でうまいものを食い、のんびり山歩きをしてきたから土産を買ってきた、取りに来ないか、というメッセージをくれたのだ。で、夕暮れ前の柔らかなひととき、のそのそとブツをいただ…

洗濯屋

こんなに美しい春の朝。なぜこんなに寂しい夢を見るのだろう。 優しい青空に新緑がそよいで金色の光にきらきらさざめいていた。(けれどその恩寵は、胸の中の寂しさに届かない。) 窓辺の小鳥に聞いてみた。朝の陽射しが彼女を金で縁取った。小さな頭で首を…

キリン5 王様

横断歩道にキリンが落ちていた。 静かな冬の夜、星は静かに時間をながれてキリンにかかる。僕は思い出す。夕暮れには天使の髪の毛みたいな淡く細いハニー・ムーンがかかっていた、その夜。(ほのほのと薄い紫がたなびいていていたのだ。確かに、ほんの数時間…

映画という表現

最近ジミジミと映画観たいな衝動。(というかウヰスキー注いだポドショコラをすするときのお供。)(ふつう逆だが。)ということで動画サイトを覗く。 ボヘミアンラプソディーは挫折したが(よく考えるともともとクイーンがダメだったのだな自分)まあ手堅く…

エドワード・ケアリー「おちび」

「アイアマンガー三部作」(レビュー記事はこちら)では、まずは設定のあまりの想定外な独自性、とっつきの悪さ、陰惨で奇妙な世界観にいささか鼻白んだ。が、やがてそれらを迫力のリアリティでなまなましく描き出す凄まじい筆力と怒涛の物語構成力に引きず…

梨木果歩「沼地のある森を抜けて」。再読記録メモ

壮大な糠漬け小説である。うねるように押し寄せるこの梨木香歩節に翻弄され引きずり込まれ圧倒され打ちのめされる、その至福の読書空間体験。 …すべては、糠床から始まった。主人公が叔母を亡くし、家宝の糠床を継いだところから物語は始まる。 やがて、日々…