酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

読んだ本

ジョージ・オーウェル「1984年」

(先週週末)ジョージ・オーウェル「1984年」読了。前半だけ読んで何だかんだほっぽってたんだけど、後半部一気読みしたら衝撃でしばらく茫然自失状態。 ものすごい読後感の悪さなんである。コンディション悪いとこに直撃食らってしばらく立ち直れなかった。…

ショーン・タン

さて、先日帰省した。こないだ実家で導入したおニューのパソ君にまつわる(周辺機器含めた)一切の設定その他のデジタル関係引っ越し作業一気に請け負ったんである。 疲れ果てた。が、大層喜ばれたんで、まあえがった。 *** *** *** というこれはこ…

「椿宿の辺りに」梨木果歩

梨木香歩さんの新刊、しかも非常に面白かった記憶のある「f植物園の巣穴」の続編、ということでどひゃーっと飛びついたんだけど。 …う〜ん、期待したほど面白く感じられなかった。というかやっぱり面白くなかったと思う。 確かに梨木果歩さん、その綿密なデ…

上橋菜穂子「鹿の王」続編「水底の橋」

読了。 で。 …うむ。 とりあえず、本編ほどのものすごさではないけどさすがに期待は裏切られなかった。流行りの医療ドラマのようなんだけど、なんというか、上質な韓国ドラマのような人間ドラマの織り成すこみいった精緻な物語構成上の感情を揺さぶるおもし…

吉田篤弘「月とコーヒー」をちまちまと読んでいるんだが。

吉田篤弘、もちろん悪くないんだけど、なんだろうな。 いまぺろっと比べるの無意味かもしれないけど、引き換えくらべて考えてしまうのだ。短編の情趣のタイプ分けというか違いというか個性というか。 つまり、川上弘美の卓越。彼女の作品は、言葉は、短編で…

ゴボジン

新しい時代の新しい元号の発表された記念すべきエイプリルフール、今日この日に、何もこんなしょうもないことを書くこともないのだが、なんとなく。(元号発表に関してはあれこれ思いはあるのですが。令和。) ゴボジン。 このくだらなさがどうしてか忘れら…

「おそなえはチョコレート」小森香折 児童書とイデオロギー

小学生からYAくらいが読者ターゲットなのかな。とりあえず可愛らしいイラスト付きの児童書。 昔読んだもので、おもしろかった、という記憶はあるのだけど内容は忘れている。(そんなのばっかりですが。)図書館の2月バレンタインチョコレート本特設本棚に並…

名前ということ(吉田篤弘「あること、ないこと」・立原道造「さふらん」・ソシュール)

さて、吉田篤弘「あること、ないこと」のマユズミさんなのである。「マユズミさん」とは何だか知らないが地球にやってきた異星人。性別はなく彼/彼女と表現される。「百科事典」を編纂することを生業とする主人公の友人である。…そうだ、百科事典を編むこと…

11月補遺・吉田篤弘備忘録

11月週末のあの日の補遺である。メモに残っていたのでメモのままとりあえず。今年もそろそろ終わっちゃうしね、心残りがないようにアップしといちゃおう。 *** *** 週末は吉田篤弘「雲と鉛筆」と、ふと図書館で手に取ってしまったのでついつい再読して…

「コンビニ人間」村田沙耶

こないだ、ポヨンと音がしたので見てみたら、 「『コンビニ人間』という本がある。感想を教えろ。」という丁寧なメッセージが我がiPhone君に入っていた。 知らんがな。 「じゃあ読め。」 知らんがな。 …しょうがないなあ。芥川賞をとったらしいのでちいとネ…

「蜜蜂と遠雷」恩田陸

本屋大賞と直木賞受賞、すごい人気のベストセラー小説。 読み始める。なんだろう、なじみが薄いせいか、昨今の流行ベストセラー小説特有の文体の臭みに最初ウっと来るが、(YAしかり、時代小説しかり、ハーレクインしかり。そのジャンルに独特の文体がある。…

カミュ「ペスト」

「100分de名著」カミュの「ペスト」録画やっと観た。 「100分〜」はレヴィ=ストロース「野生の思考」テーマのとき初めて観たんだけど、それっきりで随分ご無沙汰してた。今回なんとなくどっこいしょー、と、久しぶりに溜め込んでた録画番組消費にかかったん…

「おやつ」アンソロジー

PARCO出版の本ってのはどうも洒落ている。スタイリッシュ。 で、スタイリッシュでありながら、しっとりとした古めかしさに裏打ちされた風格もある。(それはどこか、思想、芸術、街、文化すべてがファッションになった昭和末期のt東京の匂いがするものである…

ホモイの劫罰~「貝の火」宮沢賢治(「贈与と交換の教育学」矢野智司 後編)

前回からの続き…ということで、「貝の火」である。 前から、ホモイの罪と罰のアンバランスというかむごすぎる劫罰、物語の理不尽がトラウマではあった。何故? ここで罰を受けるべきはあきらかにキツネなのに。 (これはみんな言うよね。誰も解いてない永遠…

「贈与と交換の教育学~漱石、賢治と純粋贈与のレッスン」矢野智司

ということで読みました、とりあえず。 もう序章の時点で「これは…ッ!」と興奮状態。ああ間違いない。というかタイトルみたとたん「賢治と漱石かよ…。」既にもう間違いなかったのだ。この二人を同じ切り口で論じようなんてモノは、間違いなくアレだと思った…

「森へ行きましょう」補遺(おまけ蛇足)

留津が小説家となることの意味についてもう少しあれこれ考えてみたんでおまけ蛇足ね。 …前回「森へ行きましょう」レビュで私は本作品における「書くこと」の持つ意味の可能性についてこう書いた。 *** *** 人生は、生きた世界は、そのまるごとが所詮はRPGの…

「森へ行きましょう」川上弘美

最近、長編を出すごとに常にさまざまな新しい冒険、実験をしているように思える、安定したスタイルに安住しない、生きた作家である、ってことなんだろな。 当たりはずれ好き嫌いあるだろう、私は個人的には初期のものが一番好きだし、「大きな鳥にさらわれな…

「4ミリ同盟」高楼方子

こないだの日曜日、五月の昼下がり、陽だまりの図書館で。 このときの私の心にしみ込んでこれを救ってくれたのは川上弘美の「このあたりの人たち」ではなくてこちらの方だった。高楼方子さん、期待を裏切らない。 川上弘美さんの相変わらずの不思議な味わい…

「君たちはどう生きるか」吉野源三郎

高校入学前の春休みの課題図書であった。入学早々これの感想文を提出するのが新入生の入学儀礼。我が母校の毎年の習わしであった。 ので、少なくとも私の周辺の世代の同窓生は全員これを読んでいる(はず)。 ということなので、これの漫画化されたものがい…

安房直子、金子みすゞ

金子みすゞの詩を読んでいて、その寂しい優しさになだめられた。この感じは、安房直子さんの効き目に少し似たところがある。 なんだろう。 ひやりとするような怖さも似ている。優しさは寂しさと同一であり、あきらめと受容と同一である。 だがこれは救済なの…

風の谷のナウシカ試論(ますむらひろし「アタゴオル」「ギルドマ」との対照から)

ナウシカ再読、了。(アニメじゃなくて原作ね。) 学生時代、読み始めたらとまらなくて一気読み、深夜に興奮して眠れなくなった記憶がある。 やっぱりおもしろい。神話だなこりゃ。 やっぱりね、ナウシカ原作…なんかなあ、なんかないのかなあ。この面白さを…

「真鶴」川上弘美(改訂版)

「夜の九時ごろって、人は何を考えるのかしら。聞いた。さあ。夜の三時や、あけがたの四時に感じることなら、知っているけれど。青茲の答えに、顔をあげた。三時や四時? 三時は、少しの希望。四時は、少しの絶望。きれいな言いかたね。ばかにしたでしょう、…

「この世界の片隅に」こうの史代

原作には甚くヤラれていたのだ。うっかり油断して読み始めると痛い思いをする漫画である。「夕凪の街 桜の国」とセットで原作への感想はここでちょっと書いた。 これがクラウドファンディングで映画になったという。アニメーション。なんか周囲の人々が激賞…

「福岡伸一、西田哲学を読む~生命をめぐる思索の旅」

*プロローグの立ち位置 本書を理解するにあたって、冒頭に置かれたプロローグ、及び第一章導入部の在り方は非常に重要な助けになる。 本編は全編を通して、専門の哲学者の池田氏と哲学に関しては門外漢としての生物学者福岡氏の対談になっているのだが、何…

「ナラトロジー入門」 橋本 陽介

プロップからジュネットまで、という副題につられて読んでみた。 入門書としてきれいに鳥瞰されているのでよかった。大体、専門的な各論を読むよりも寧ろ、すっきりと大まかな概念を理解するにはこういうのがいい。 大学時代、ジュネットとかバルトとかヒジ…

西加奈子「i」

読了。 この人の作品初めて読んだけど、なんかだめかも。いい作品なのかもしれないけど自分にはダメだ、響いてこない。 帯にある中村文則の宣伝文句どおり、この小説は「この世界に絶対に存在しなければならない。」を否定はしない、寧ろ賛同はするけれど。…

「ホテルカクタス」江國香織

「僕の小鳥ちゃん」、「ホテルカクタス」。 江國さん久しぶりに読み返す。 この人の作品は、やっぱりこういう童話風というか、いわゆる大人の絵本という感じの作風のが好きだな。 意味があるようで、ないようで。 …ちょっと気取ってるかな。若い女性向けのお…

「ぼくの死体をよろしくたのむ」川上弘美

さまざまなテイスト、さまざまな趣向を凝らした18篇からなるオムニバス。(川上弘美のこういう面が好き、これはあんまり、とか、同じ川上弘美ファンであっても、どの作品を好むか意見が別れるところかも。)(そしてこのどれもが、いつか作者の中で膨らんで…

桜の季節 安房直子「うぐいす」

毎朝、悪夢から絶望と共に目覚めるタイプである。のっそりと日々を漕ぎ出す。浮上できればめっけもの。 *** *** だけど、今年もまたマンション中庭のソメイヨシノが開花した。少し嬉しくなる。世の中きちんと春がやってくるのだ。 で、隣町の図書館前…

村上春樹「騎士団長殺し」

…先週だったかな。深夜、泥酔状態で(いつもだ。)「騎士団長殺し」読み終えた。で、その夜、寝ながらあれこれ考えていた。 さくっと言ってしまうとあんまりおもしろくなかった。が、いざこう言ってしまうとやっぱりおもしろくないわけではなかった、とも言…