帰宅したら、薔薇の花束が届いていた。
誰だろう。
誕生日に花束を贈られたのなんて、何年ぶりだろうか。
誰だろう。
薔薇ならば、深紅で、開きかけの蕾が一番好きだと口にしたことがあるのは学生時代の話だ。誰がそのことをおぼえていたんだろう。
誰でもいい。
何かの気のせいかもしれない。最近、すべてできごとは夢の中のことのような気がする。
私は花束のりぼんを解き、食卓に飾る。少し疲れていたけど、少し嬉しい。
誰でもいい。
ヤナちゃんの歌を思い出したんだ。
脳内でぐるぐると歌い続ける。
「まだ見ぬ恋人よ傍に来て。ロープにぶらさがる男を抱きしめろ♬」
(オレ男じゃないけどな、気持ちとしてはこれなんだ。)
それから、ムーンライダーズ
「薔薇がなくちゃ生きていけない♪」
ありがとう。
精一杯生きなくちゃ、まだ見ぬひとと、酒と薔薇。
これさえあればきっとひとは生きられるようにできている。