酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

恩師ご退任

ゼミでお世話になった先生が定年を迎えられた。この3月で退任される。…ということで歴代のゼミ生たちによって催されたのが3月吉日土曜正午「M先生のご退任を祝う会」。

ピカピカ立派な渋谷のホテルの地下ホールにて賑々しく行われた。

渋谷は苦手である。会費は高い。徒に馬齢を重ねまもなく泡沫に帰するであろうくすんだ人生である。ひたすらひっそりと引きこもって暮らしているので、きらびやかに活躍している人々とのハレの場での交流は気が重い。相応しい衣装もない。

出席はご遠慮申し上げたいと即答したいところだったんだが、嗚呼相手はほかならぬM先生。学生時代、ひとかたならぬ恩義を受け、ファンクラブ副会長を自認していたくらい慕っていた先生である。参加しないという選択はありえない。ああ、ああ、仕方あるめいよ。ひたすら失礼にならぬようひっそりと式場の片隅にうずくまっていよう。

…と覚悟を決め、寒の戻りでひどく冷え込む朝、重い心身をひきずり、(深夜に摂取したアルコホルが残っていたのだ。)不景気な曇天の下、陰鬱な心持ちで大嫌いなソドムとゴモラの街に向かったんである。

***

で、結果としては、

「ものすごい楽しかった。」

***

 さすが私のお慕いしていた人徳篤い先生である。歴代ゼミ生みな有能で楽しい、優しい人々。同期とは顔あわせた途端あの頃に戻ってちゃりちゃりおしゃべりできてしまう。

主役の先生はきらびやかな人たちに囲まれた向こう側のスター、近くによることもかなわぬであろうと思ってたのになんだかんだわやわやと楽しくお話させていただきお隣で写真まで撮っていただいたりしてもう幸甚の至り。

晴れがましいきらびやかな場にいる自分というのも入り込んでしまうと楽しいものなんだな、ウン。

(しかし昼間っからまたべろべろ。)

席次は受付の際文士たちの写真のついたくじをひいて12.3人ずつにテーブル分けされる趣向。私は鴎外を引いた。

鴎外は好きではない。

「ヤダー鴎外ー。」とついつい。そしたら少し遠くにおられたはずの先生に聞きとがめられた。「なにィ、ヤダだって?」…先生は鴎外お好きなのだ。そういえば学生時代にも全く同じ叱りかたされたことを思い出した。人間変わらぬものだ。

でもね、賢治テーブルもあったんだよね、やっぱ賢治がよかったな、オレ。

まあしかし型どおりの祝辞挨拶乾杯その他みごとに打ち続く美辞麗句、なんだかねえ、晴れがましかったねえ、やっぱり。コレに今自分が属しているのかと思うとなんとも不思議な心持ちになった。文学研究関係、出版業界や創作、各分野でぱりぱりに活躍している人たちゾロゾロで、なんだかねえ、眩かったり切なかったり素直に誇らしかったり思い出記憶捏造含めあれこれどっと押し寄せて意識野に現前してきたり。今現在が夢であるかのように物語化されてリアリティを失ってきたりもする。

ううむ。ひとことでこの感覚を言ってみるとだな、「人生面白いものだ」って感じかねい。

余興でのテーブル対抗「先生クイズ」(先生のエピソードにまつわる三択クイズ)では我が鴎外テーブルは全問正解見事優勝、賞品の素晴らしいゼミオリジナル手ぬぐいを頂戴した。賞品授与の際なぜか私は皆からクイズ正解功労者としてテーブル代表で舞台に押し出され、己にふさわぬ場所に非常にきまり悪く恥ずかしい思いをしたが、先生にお近くで「おお、momonga君。」とにこにこされて嬉しくもあった。

しかしグダグダに疲れた。
疲れすぎてシビシビで何もできないのに眠れない。

飲み直して無理やり寝る。
明日はきっと一日ゾンビ。