酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

医者も薬も嫌いだ。が。

医者が嫌いである。

薬もよほど激烈な症状がない限り、また痛み止め的なもの以外は極力飲まない。風邪薬なんて実際たやすく飲むもんじゃない。飲むとしたら葛根湯だ。

大学時代、アイルランドで風邪をひいて現地の市販薬を飲んだことがある。

…ラリッた。これはびっくりした。朦朧としてミョーな浮遊感でふわふわしてしまったんである。実は結構クセになりそうなふわふわであった。

幼いころ強烈な喘息の薬を飲み続けていた時も同様の感覚を得たことがある。発作の苦しみが呼吸できることになってほぐれた天国、と思っていたんだが、よくよく思い出してみるに脳内に独特の痺れるような一種の快感があった。おそらく苦痛を麻痺させる快楽物質のようなものも含まれていたはずである。

アイルランドのそれには多分日本の風邪薬の規格とは違う劇的な成分が含有されていたんだろう。日本人にしてもおチビサイズのmomongaが向こうの巨大なボンレスハム状態の人々と同じ「成人標準服用量」を摂取したのが間違っていたのかもしれない。体重が三倍の人と同じ量の薬物摂取したら過剰になるのも蓋し当然である。

 

…実は好きなんである。何しろアル中症候群になってるくらいだしな、薬物全般に恐ろしいほどのファンタジー幻想と好奇心と憧れがある。だからこそたとえ市販の風邪薬であろうともうっかり手を出したりしないのだ。私に一旦ヤクを与えたらとことん底なし沼にハマることであろう。私の根性は絹ごし豆腐並にヤワなのだ。あってなきが如くの淡雪。ご先祖様からの天からの賜りもののこの身体を自ら害するという申し訳ないことになってしまう。

医者も実は覚悟を決めていってしまえば結構楽しんでしまったりする。己の身体が物質化される感覚は楽しい。薬がどのように効くのか人体実験が己の身体で実践できるのは楽しい。巨額なカネのかかったファンタジーランドである。葬式や法事が坊主読経ライブの楽しさであるのと同じくらい楽しい。

デパスデプロメールを処方されたときは迷わず両方麦酒で飲み下した。ストンと意識を失って日がな一日朦朧として困っただけで全然気分はよくなかった。鈍く眠くローになって日常に支障をきたすだけだ。つまらない。

カヴァカヴァもアメリカのサプリメントで取り寄せて容量の10倍くらいまで麦酒で飲み下した。ものすごい気持ちが悪くなって苦しんだ末ぶっ倒れただけだった。死ぬかと思った。二度とやらない。

大麻は高校の友人が売人と知り合いになったから一緒に頼んでみる?と話を持ち掛けられたことがあるがやめておいた。違法であるというよりそんな資金がなかったからである。後日体験してみたという彼に感想を聞いてみたら、すごい高価だった、全然よくなかった、損した、と言っていた。ヤレヤレ。

やっぱりね、ヒッピー文化の頃の話なんかちょっと見るとね、憧れちゃうんだよね。古今東西神懸かり賢者には薬物がつきもの。ペヨーテを食み意識の高みに上るシャーマンとか護摩を焚き歌い踊り治療する坊主たちとか。

 

…薬物、問題になってますな。でもさ、やっぱり純粋に被害者だと思うんだよね。取り締まる矛先が違う。罰するよりも保護すべきだと思うんだ。被害者ばかり心身ボロボロになって泣きっ面に蜂、堕ちた偶像をその哀しみを得意げにことさらに死者を鞭打つようにして叩きのめして何が楽しい。正義面した匿名の人たち怖い。ひどくかなしい。

 

…でもさ、大きな声では言わないけど、大麻はいいんじゃないかなあ。アヘンも。国営阿片窟とかにして。煙草禁止して大麻許可すればいいのに。(でもヘロインやLSDは絶対ダメ。コカの葉はいいけどコカインはダメ。黒砂糖はいいけど白砂糖は嫌い、玄米はいいけど白米はイヤとかそういう理屈で。なにものも作用は自然物がマイルドで効能も激烈じゃないけど害も少ない。)

如何に管理するかって問題なのではないかと思うのだ。大体さ、国民の健康や社会秩序のためなんだったら酒も煙草も何故許可するのかさっぱりわからない。実際身を持ち崩す人は既に酒で持ち崩している。薬物いろいろ酒と同じように管理すればいい。暴力団とか怪しげなものの資金源にならないために、白日の下に管理するってできんのかしら。厳しい許可制で税金とって健康面フォロー体制万全整えて。

う~ん、でもやっぱりわかんないな。どうなんだろう。そしたらなんかこの社会変わるんかしら。ひどくなるのかよくなるのか、どっちに転ぶかはわかんないよ。

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大学出た後、しばらくトルコで暮らしていた。その頃書いたおはなしがこれ。薬物憧れファンタジー。(ちょっと長いです。)