酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

お脳が弱い

地元のご町内なんだけどな、なんとなくいつもと一本違う道でだな、花とか見つけて一生懸命撮影したりしてだな、はっと振り返ったとき、さあっと午後の金色の光が街を包み込む風景の中にいたりしてだな、一瞬自分が誰で今どこにいるのかわからなくなる感覚、というのがある。ただ、きれいだな、と思う。

これが、すごい好きなんだな。ただきれいだな、と、その傍観する世界への愛に似た感情、至福感の中にあること。

何もかもはぎとられ、ひとりで、日常世界から切り離されたときの寂しさと怖さの中にあるんだけど。代わりになんだか違うところに近くなる。遠い故郷。

今、うまく言えない。けど書いておきたい。今ある己の歴史やしがらみや戸籍やアイデンティティ、すべてを失った後でも残るもの。

朝起きて、あるいはお昼寝から覚めて、目覚めた瞬間の何がなんだか一瞬さっぱりわからない、日常に戻る一瞬前のあの頼りない感じなんだけど。

美しい考えに満ちた物語の本に夢中になって、読み終えて、ホウ、とため息ついて顔を上げたときの感じ。世界が、風景が、不思議に真新しく見える。

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…率直に客観的に考えて、俺いろいろ人よりお脳が弱い部分があるんじゃないかと思うんだな、昔から。認識能力が。地理感覚とか時空把握能力とかに関連して、感覚を統合する大脳のどっかが。地図読めないし方向音痴だし。

きっと、ものすごくゲシュタルト崩壊しやすいのだ。統合能力が脆いのだ。医者から自律神経失調でしょうとミョーな薬を処方されたことがある。

小学校に入学したときも本とノートの区別がつかなくて、先生から「はい、本の方をだして〜」などと指示されたとき違った方を出して怒られたらどうしよう、と激しく恐怖したあの感情を今でも鮮烈に思い出すことができる。九九は今でも順序だてて口ずさまないと目的の数字に辿りつかない。ABCもあいうえおも実はそうである。阿呆カミングアウト。

日常的にアルコホル摂取しないと身体中痛くてやるせない、眠れない、休肝日ももてないようになってから脳細胞がアルコホル漬になって、細胞老化劣化が加速してきたような気がする。

こないだもたった今手に握っていた布巾がなくなって大探ししたら丁寧に畳んで冷蔵庫にしまってあったし、洗濯したての白いシャツ着たら途端に我が手に握ったスプーンからカシスの鮮やかな紫や濃いココアのしずくが胸元めがけてはじけ飛んでくることになっている。泣き泣き洗濯する。

なんだか胸が苦しい、恋かしら、と思ったときはシャツを後ろ前に着ている。

初めて行く町では地図ナビもってても必ず迷う。

…でもね、こうやってさまざまが淡く淡くなってくるんだったら、いろいろ怖いことも薄れて、たとえ死んでしまうということだって、その鮮烈な恐怖すらも失って、恐れるほどには怖くないものになるのかもしれないな、と思うんだ。

私がいなくなって鮮烈に悼んでくれる人なんか私を産み育てた母だけだろうしな、きっと。

寂しくないわけではないが素直にそれを認める。

何にも恐れずにただ前向きに生きようと思う。ウソだけどホントです。