8階のベランダから、蛍のように光る街灯の列を眺め、夜風に吹かれていると思い出す。
高1のときの夏の合宿の二日目の夜、屋根の上にいた私たちの風景のこと。
夜中M子と一緒に部屋を抜け出して、屋根の上に這い出してみたら、先客のOBが寝転がっていた。星空の下、カセットで音楽を聴いていた。
高原で、星空が見事だった。音楽は星のさざめきのように不思議な響きのものだった。先輩は「お。」と挨拶した後、ただ黙って転がってるだけだったし、我々も黙って一緒に星空眺めて三人で屋根に転がっていた。
あのときの、あのひとときの風景のためだけに、何か作りたいと思う。きっと、作家はそのために物語を書き、絵描きは絵を描き、音楽家は音楽をつくるのだろう。
「悲しみよよう聞けよ/一行の詩残せたら/山が燃え沈んでも/生きた事になるだろう♪」(ムーンライダーズ鈴木慶一「黒いシェパード」)