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酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

ゼミ同期会

部屋でいつものようにひとりで酒飲んで人生ダメにしつつ、赤ちょうちん行きていな、とふと思う。

で、表ブログ(これは裏ブログ)の方に以前居酒屋のことなんかアップしたよな、と探してみたら懐かしくなったのでちょっと編集してこっちに転載。

***

 

大学のゼミの同期会に行ってきた。

場所は、授業の後先生に連れられてみんなでよく行った思い出の場所、渋谷のんべい横町。

ママさんがひとりで切り盛りしている小さな居酒屋で、いかにもクラシックな昭和感。居合わせたサラリーマン客たちがみんな仕事の後ほっと一息つく、ひとときの安らぎと親密さに満ちた小さな空間。

初めて連れてってもらった。初めて見る世界だった。
未知の世界、日本の誇るサブカルチャー居酒屋文化の深みと巨大さ、その情趣に感動した。居酒屋デビューできたこのときのこと、とても貴重な体験だと思っている。

ウチの父は絵にかいたような下戸だったので(好物は虎屋の羊羹と福砂屋のカステラ。)我が家では酒というのは異次元の魔法アイテムであり居酒屋は異界だったんである。居酒屋デビュー、なかんづくこの渋谷ののんべい横丁赤ちょうちんデビューは私が大学に入って学んだもっとも大きな成果なのかもしれない。

…今はどうなっているんだろう、あのときの印象から変わってしまっていないだろうか、と多少気をもみつつ。

さて、渋谷は苦手だしリニューアルしてから初めてだから、早めに出発。

駅までの道、ふと上を向いたら、もう柿の実が生っている。季節はいつでもちゃくちゃくと次に来るものの準備をしてるんだ。
Kaki

東京方面への中央線は結構混んでいる。たくさんの人々がこうやって土曜の夜の街の華やぎの中に繰り出していくのだ。

住宅街の家々の灯りの中、家庭のおだやかな団欒や、ひっそりと小さなアパートの一室で過ごす少し寂しい人やのさまざまの土曜の夜の風景に思いを馳せる。

人混みにもまれながら、新宿のりかえ、山手線で渋谷着。

しかし、渋谷駅。昔から苦手で迷宮だと思ってたけど、ますます迷宮ぶりに磨きがかかって訳が分からなくなっていた。しばらく外に出るルートもわからず、冷や汗かきながらオロオロオロオロ。

ヒイヒイとやっとの思いで外に出て、相変わらずの人混み、猥雑なエネルギー、ぎらぎらした消費経済文化、欲望、虚飾に満ちたソドムとゴモラの街のイメージに毎度のことながら辟易しつつ道を急ぐ。

駅の周りもごちゃごちゃですごくわかりにくいのだ。私は地理オンチなのだ。焦る焦る。

ヒイ、あった~!
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この横丁に一歩入り込むと、たちまち懐かしい心持ちに襲われる、タイムスリップ異空間。

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ここだ、ここ。「えのき」。
のれんと灯籠がしっとりとあたたかい。

本当に小さなお店。五人も入ればいっぱい、ぎゅうぎゅうにつめて八人くらいかな。

扉を開けると、ママさんが私を見た途端「M先生ね、二階よー。靴箱二階にあるから靴持って行ってね。」

ああ、憶えてくれていたんだ。

このママさんには、当時可愛がってもらったものだ。
しみじみと懐かしい思いを味わいながら、急で狭い古い木の階段の暗がりを靴を持って上る。ぎしぎし。

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うへ。こんなお面が迎えてくれた。

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四畳半もないんじゃないかなあ。
昔の日本映画の中みたいな部屋の中。なんともうらさびれた昭和情緒。

…そして、懐かしいメンバー、大所帯だったゼミの中で比較的仲の良かった五人。先生はすっかり白髪頭になってしまわれていたけれど、なんだかみんな変わらない。あの頃の懐かしい気持ちが押し寄せる。

冷たい麦酒、再会を祝して乾杯!
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ママさんのお手製の料理は洒落ていておいしいのだ。
茗荷と香味野菜、刺身の気の利いた小皿。

器もひとつひとつがとっても可愛い。
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箸置きも凝っている。茄子や胡瓜、こんな腹掛け坊やのも。

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茄子やなんかをこっくりと濃い味で炒め煮したもの。

下のカウンターで飲むときはママさんに肴を注文したりリクエストしたりするんだけど、二階の今夜はおまかせミステリーコース。下から「料理できたから持って行って~」と声がかかるので、「はいはい~」と交代で取りにゆく。

鮭のハラスじゅうじゅう焼いたのや、ピーマンの香味肉詰め辛子たっぷり、心遣いの行き届いた手作りの味、一皿一皿がメインディッシュになりそうな立派さだ。消費量見積もって食材仕入れ、メニュー考案、調理、盛りつけ、サーブのタイミング、後片付けこなしながらお客の相手。

毎日毎日、ママさんひとりで店の何もかも切り盛りするの、ものすごく大変なんじゃないかなあ…

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…さて肝心のゼミ会。会わないでいる時間、あんまりにもこの空白の時間が長かったから、ちょっと緊張したりしてしまっていたのだ。初めて会う人のよ うにぎごちなくよそよそしくなってしまっていたらどうしよう、大切な思い出が失われてしまうような残念なことになってしまっていたらどうしよう、等々ぐず ぐず。

ああだけど、こんなにも時間がたってしまったのに、みんな何だか変わらない。話し方も仕草も。一緒にいると、たちまちその頃が蘇る。時間が巻き戻るこの感じ。

先生も、すっかり白髪になってしまわれたけれど、お変わりない。やっぱり嬉しい。(私の方も「キミもその話し方変わらないねえ~」と言われてしまったが。)

思い出話。そして、ひとりひとり近況報告。

大学を卒業してから、ただただ平坦な道を歩んできた人などいない。変わりないようでいて、やはりそれぞれに人生のさまざまを背負い歩いてきた道のりがあるのだ。

そして何しろ文学部ゼミである。本の話になるとみんなアツい。
鬱陶しいほどの熱さで語りあってしまう。すごく刺激になる。

ああ、こんな風にこんな場所で本の話や議論ができることは、こんなにも楽しい。先生や友人に恵まれ、そんな学生時代があったことをしみじみと幸せに思ってしまったりしてしまったことであるよ。

 

…ちょっとね、調子にのってはしゃぎ過ぎたかもしれない。
くたびれた。翌朝目が覚めたら、声がガラガラ。

 

一日ぐったりだ。ヤレヤレ。
(だけどやっぱり、またたまにはこんな風にみんなと会えたらなあ、とほんのり思っているのであるよ。)