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酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

学習院大学とぽっぺん先生

舟崎克彦さんが先月10月15日に亡くなった。

ショックだった。

ぽっぺん先生シリーズが大層好きであった。もうどう転んでも続編は期待できないのか。…全編読み返そうかしらん。

ぽっぺん先生シリーズについてはいろいろ思うことが多い。舟崎克彦はテクストそのもの、言葉遊び、物語の重層性、書き手と読者と物語内容のレヴェル構造にジェラール・ジュネットの「物語のディスクール」で提唱されているようなナラトロジーに関する意識的な仕掛けが多くて本当に面白い。書く機会があれば一度きちんと分析してみたいものだと思っている。

(なんで児童文学にはきちんとした論理的な考察が少ないのかなっていっつも思っている。構造の多層と仕掛けられた緻密な物語構造とその複雑さ、その深みをきちんと押さえた面白い論文に出会ったことがない。宮澤賢治くらいにほかの児童文学作品にも優れた人たちの論文が出回ればいいのに。児童文学だからってコドモの情緒的ななぐさみものだってバカにされてる気がする。いいけどさ。)

…図書館で10月6日に刊行された最後の作品見つけた。これで本当に最後なんだな。かなしい。もったいなくてなかなか開けない。

 

作家でも俳優でも音楽家でも声優でも、どんどんと親しみ深かった人たちがいなくなってゆく。影響を受けた世代の人たちがいなくなってゆく。世代交代。切ない。

そのそれぞれの方たちの訃報はいちいちショックなんだけど、今までで一番衝撃的だったのは、らもさんだなあ、やっぱり。あのあまりにもいかにもな、あまりにもふさわしい、出来すぎじゃないかと思うくらい、ほとんど演劇的に破滅的な最期。

酔っぱらって二階の階段から転げ落ちて死んじゃうなんて、と、なんだかもうあの日はものすごいショック受けてクラクラしていた。世界が誰かの仕立てた書き割りに従う劇場になった気がした。

鬼才、奇才というにふさわしい。あのいたましく破滅的な生き方と文章のスタイル、あの激しさ。本業の演劇作品は拝見したことはないんだけど、朝日に連載してた「明るい悩み相談室」で初めてであったエッセイはみんな滅茶苦茶におもしろかったし、「ガダラの豚」一気読みして読み終えた深夜はもう一人でトイレに行けないレヴェルの怖さであった記憶がある。「今宵、すべてのバーで。」あの恐ろしいアル中小説はぐでんぐでんに酔っぱらいながら読んだものだ。晩年のものには、申し訳ないがもうあの狂ったような鋭く激しい輝きを感じることはできなかったけど。

 

で、舟崎氏。

学習院出身である。初等科から。
ぽっぺん先生(万年助教授)の在籍する独活大学のイメージは実にこの学習院大学である。あの、日常から離れた不思議な緑豊かな異次元の森が隠れていそうな風景がキャンバスにあるという。

だから、というわけでは全然ないが、この大学にしばらく通ったことがある。どれくらいの期間だったか忘れちゃったけど。…学習院と早稲田と私の大学は提携していて、大学院の授業を取ることができたのだ。

一種憧れであったこの独活大学のモデルの地に乗り込んだときはわくわくした。ゼミの仲間三人で殴り込みの道場破り(違)。

学習院の風景、イメージ通りだった。授業はといえば漱石の「明暗」、すごく厳しくて有名な食えない先生で怖かったし大変だったけど、他流試合、刺激的で面白かったし、教室はきれいで明るくて学習院の連中は気のいい人たちで、なんだかいい思い出になっている。

帰りには礼宮と紀子さんがデートしてたっていう喫茶店に潜り込んで、お二人のデート現場だったっていう席にきらきらのピンクのハートだらけの垂れ幕かかってるのに仰天、三人で指さして笑ったり。

で、弟子どもが他所の先生んとこに遠征してると、ゼミの先生は何気なく気にしておられたりする。我々三人からさりげない風でそれぞれの様子を探ってみたり。「どうですか、学習院のTさん(オニ教授)の授業は。(学習院の連中にひけをとってはならんぞ。)(無言の圧力。)」「なに、momong君、Tさんに褒められたんだって?(ウチの子が。)(にこにこ。)」みたいな「ウチの子」扱いされて、ゼミの先生大好きだったから嬉しかったりね。

 

どうしてかな。学習院(「なーにをかくそうアーレをかくそう最終学歴学習院♪」っていうザ・ナンバーワンバンドの歌結構好きであった。)、記憶の中の、この非日常の朝のきらきら明るい幼児の頃の思い出に通ずるようなイメージは。我が記憶の中では完全にぽっぺん先生に、あれを読んでいたときの気持ちにつながってしまっている。

2限だったせいかな。いつもと違う電車に乗り換えて、目白。いつもと違うキャンパスに乗り込む日。違う人の人生のつもりごっこ遊びのようなわくわく新鮮な心持ち。きらきら朝の光の中。

基本的に実は他所者だけど、でも今はここに特別入っていい特別通行手形な資格をもってるんだぞ、みたいな複雑な禁断の園に入り込む気分なので、そこはかとなく緊張して守衛さんを横目でにらみながら門をくぐり、その境界をくぐり、明るいキャンパス、緑金の輝く美しい森の中にはいってゆく。

そこは、実は独活大学で、ぽっぺん先生食物連鎖の迷路の中に迷い込んでゆく不思議な異次元の森が隠れているような気がした。

 

(実は早稲田の授業もとったんだけど、こちらはものすごい悪い印象。…暗くて寒くて陰気な幽霊屋敷みたいな文学部校舎。授業もつまんなかった。…イヤまあただ単にそれ5限だったから、夕方もう疲れてたし一人で乗り込んだからっていうのが主な原因なんだけど。ごめんなさい早稲田大学。単位くれてありがとう早稲田大学。)

ぽっぺん先生シリーズ、もっともっといっぱい書いてほしかったなあ…