酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

「おばあちゃんのちょうちょ」バーバラ・M・ヨース&ジゼル・ポター

東北地方太平洋沖地震をはさんで、梨木香歩「ピスタチオ」。
そして、関係ないけど続けて読んだ絵本「おばあちゃんのちょうちょ」。

ひどくよかった。絵本の方は、絵描いたジゼル・ポターが好きだったからなんだけど、よかった。

重なり合う複雑に凝った世界を重ねる物語の構造で読ませてくれる「ピスタチオ」と、とてもシンプルな子供用の絵本、「おばあちゃんのちょうちょ」。

まったく違うんだけど、どちらも、死者の国と生者の国、それを媒介する超自然的な動物信仰という古来の「知恵」。一方はアフリカの呪術的世界観を、もう一方はメキシコの伝統行事のなかに息づく古来の世界観を物語る。

生きることにも死ぬことにも、人間の命をまるごと、世界をまるごと、意味あるものへと謳いあげてゆく人間の祈りのような美しさ、文学に永遠の、普遍の、このテーマ。

絵本の方は、毎年メキシコに行っているバーバラ・M・ヨースというアメリカの作家さんが描く、メキシコの伝統的な習俗生活が、興味深く、なんともイイ。女の子と、女の子をかわいがっていたおばあちゃんが亡くなってしまうお話。死者との別れ、その激しい悲しみを処理するための、儀式のこと。

日本の「お盆」のような、「死者の日」のお祭り。このテーマには、どこか、万国共通のかたちがある。
死者の魂を運んでくるものは、ここでは、オオカバマダラチョウという、金色の蝶。10月31日から11月2日のこの祭りでは、なくなったひとたちの魂が今でも自分たちと一緒にいることをよろこぶ、楽しいお祭りになっている。

独特の素敵な色遣いのポターさんの絵とあいまって、おばあちゃんと女の子の楽しい交流の日々は、素晴らしく美しい。一緒にトルティーヤを作る、闇の怖い夜には、一緒に眠って守ってくれる。いつでもバラととうもろこしの香りのする、おばあちゃん。

その死の悲しみが、女の子の思い出の中で、永遠の生へと変換されてゆく、儀式と自然の描写。「おばあちゃんの歌声がきこえる。バラとトウモロコシのにおいもする。…もうおばあちゃんは、どこにもいかない。」…シンプルでみじかいお話なのに、深い印象、ほんのりと切なく優しい読後感。

良書と思う。


おばあちゃんのちょうちょ

おばあちゃんのちょうちょ