酔生夢死DAYS

本読んだらおもしろかったとかいろいろ思ったとかそういうの。ウソ話とか。

読んだ本

安房直子、金子みすゞ

金子みすゞの詩を読んでいて、その寂しい優しさになだめられた。この感じは、安房直子さんの効き目に少し似たところがある。 なんだろう。 ひやりとするような怖さも似ている。優しさは寂しさと同一であり、あきらめと受容と同一である。 だがこれは救済なの…

風の谷のナウシカ試論(ますむらひろし「アタゴオル」「ギルドマ」との対照から)

ナウシカ再読、了。(アニメじゃなくて原作ね。) 学生時代、読み始めたらとまらなくて一気読み、深夜に興奮して眠れなくなった記憶がある。 やっぱりおもしろい。神話だなこりゃ。 やっぱりね、ナウシカ原作…なんかなあ、なんかないのかなあ。この面白さを…

「真鶴」川上弘美(改訂版)

「夜の九時ごろって、人は何を考えるのかしら。聞いた。さあ。夜の三時や、あけがたの四時に感じることなら、知っているけれど。青茲の答えに、顔をあげた。三時や四時? 三時は、少しの希望。四時は、少しの絶望。きれいな言いかたね。ばかにしたでしょう、…

「この世界の片隅に」こうの史代

原作には甚くヤラれていたのだ。うっかり油断して読み始めると痛い思いをする漫画である。「夕凪の街 桜の国」とセットで原作への感想はここでちょっと書いた。 これがクラウドファンディングで映画になったという。アニメーション。なんか周囲の人々が激賞…

「福岡伸一、西田哲学を読む~生命をめぐる思索の旅」

*プロローグの立ち位置 本書を理解するにあたって、冒頭に置かれたプロローグ、及び第一章導入部の在り方は非常に重要な助けになる。 本編は全編を通して、専門の哲学者の池田氏と哲学に関しては門外漢としての生物学者福岡氏の対談になっているのだが、何…

「ナラトロジー入門」 橋本 陽介

プロップからジュネットまで、という副題につられて読んでみた。 入門書としてきれいに鳥瞰されているのでよかった。大体、専門的な各論を読むよりも寧ろ、すっきりと大まかな概念を理解するにはこういうのがいい。 大学時代、ジュネットとかバルトとかヒジ…

西加奈子「i」

読了。 この人の作品初めて読んだけど、なんかだめかも。いい作品なのかもしれないけど自分にはダメだ、響いてこない。 帯にある中村文則の宣伝文句どおり、この小説は「この世界に絶対に存在しなければならない。」を否定はしない、寧ろ賛同はするけれど。…

「ホテルカクタス」江國香織

「僕の小鳥ちゃん」、「ホテルカクタス」。 江國さん久しぶりに読み返す。 この人の作品は、やっぱりこういう童話風というか、いわゆる大人の絵本という感じの作風のが好きだな。 意味があるようで、ないようで。 …ちょっと気取ってるかな。若い女性向けのお…

「ぼくの死体をよろしくたのむ」川上弘美

さまざまなテイスト、さまざまな趣向を凝らした18篇からなるオムニバス。(川上弘美のこういう面が好き、これはあんまり、とか、同じ川上弘美ファンであっても、どの作品を好むか意見が別れるところかも。)(そしてこのどれもが、いつか作者の中で膨らんで…

桜の季節 安房直子「うぐいす」

毎朝、悪夢から絶望と共に目覚めるタイプである。のっそりと日々を漕ぎ出す。浮上できればめっけもの。 *** *** だけど、今年もまたマンション中庭のソメイヨシノが開花した。少し嬉しくなる。世の中きちんと春がやってくるのだ。 で、隣町の図書館前…

村上春樹「騎士団長殺し」

…先週だったかな。深夜、泥酔状態で(いつもだ。)「騎士団長殺し」読み終えた。で、その夜、寝ながらあれこれ考えていた。 さくっと言ってしまうとあんまりおもしろくなかった。が、いざこう言ってしまうとやっぱりおもしろくないわけではなかった、とも言…

闇太郎

川上弘美はおもしろい。 ダイナミックな作風の変化があって(おそらく意図的な。)実験的なものもあり、作品によって当たりはずれ、というか好き嫌いが別れそうな作家さんだと思う。だけどやはり、そのどれもがどこか私の心を揺さぶるところをもっている。 …

銀河鉄道の夜、あれこれ。

去年、友人の息子さんの読書感想文に関して質問されたことがあった。「銀河鉄道の夜」に関して。 この日の記事ね。 さっきメールの記録で探し物してたら、そのときの答えのメモがあったので、あげておこうかな、と。 *** *** ①雁を食べたらなぜお菓子…

朝の憂鬱。カミュ「異邦人」。

恐れていた朝は恐れていた通りやってくる。 空いっぱい奇妙な砂色の光で満たされる瞬間を見た。これが朝か。 不吉な光の中で、カミュ「異邦人」について考える。 昨夜読み終えた。実は今まで通して読んだことはなかった。(知識としてショッキングな出だしや…

廃墟と希望(日曜美術館「花森安治」・三木卓「惑星の午後に吹く風」)

先日の「不可知の許容」の「とと姉ちゃん」つながりである。 普段みないんだが、日曜美術館。通りがかったら母がみてたんで、つい一緒にみてしまった。花森安治の特集だったのだ。(花森安治は「とと姉ちゃん」の花山伊佐治のモデルになった天才編集者。「暮…

「合成怪物の逆しゅう」レイモンド・F・ジョーンズ

1950年に発表されたアメリカの子供向けSF。 (66年前かよ!)日本で刊行されたのは1967年。 小学生の頃読んだときの強烈な記憶があって、ずっと読み返したいと思ってたのだ。「ゴセシケ」って言葉と脳だけになった科学者がぶよぶよした合成細胞…

「大きな鳥にさらわれないよう」川上弘美

冒頭の章「形見」は序章だ。 クローン技術を駆使した工場で生産される人間や動物たちで構成された不思議な町の風景が描かれる。 この不思議な設定の下で暮らす女性の語り、生活風景を序章として、夢の断片のようなSFじみたさまざまの世界設定の幻想が展開さ…

アースヘイブン物語(そして攻殻機動隊)

アースヘイブン物語。 キャサリン・ロバーツ、この人の作品は全部読んだはずなんだけど覚えがない。もしかして読んだことなかったんだっけ。…と思いつつとりあえずとにかくやっぱり面白い。 異界、魔法世界と現実日常世界の二重世界、そこでの悪役と秩序側の…

「ドミトリーともきんす」高野文子

「ドミトリーともきんす」高野文子 図書館でさあっと眺めた程度なんだけど、くらくらするような、なんとも不思議な読後感。 自然科学と詩の近さと遠さ、その共通と違いのこと、世界の見え方のこと。 カオス、こみいった複雑な曲線のみで構成される具体として…

「ソラシド」吉田篤弘

時代と、街と、音楽、そして言葉。 独特の透明な空気感。 この人の作品世界には、言葉遊びのようなスタイリッシュな文体によって醸し出されるあざとさと、どこか高踏派的な空気感が漂っている。そして、行間ににじむほのかな哀愁、小粋なエスプリの快さ、ノ…

節操がない その2

「物語ること、生きること」上橋菜穂子(構成・文 瀧晴己) 「守り人」シリーズで知られる上橋菜穂子、デビュー作「精霊の木」からずっと追っかけて新刊が出るたびに飛びつくようにしてリアルタイムで読んでいた。 …稀有な物語メーカーである。(本屋大賞な…

「岸辺のヤービ」梨木香歩

梨木果歩さんの童話、となるとこれはもう読まないわけにはいかない、少しの緊張とわくわくを胸にページを開く。 そして、やはりその期待が裏切られることはなかった。 梨木果歩節全開である。非常に注意深く丁寧につくりあげられていて、吟味されたことばが…

安房直子論

序 安房直子。美しく柔らかく、少し怖いような、類稀な作品を多く残した童話作家であり、熱烈なファンは多い。 民話的な要素を色濃くもった彼女の作品群の、骨太で深い独自の魅力は、どのような構造の中に秘められているものなのだろうか。ずっと考えてみた…

「わがままいっぱいの国」アンドレ・モーロワ

子供の頃読んで、タイトルの印象とストーリーが頭のどこかにずうっとひっかかっていた。教育的な寓話的なイメージなんだけど、そのメッセージがよくわからなかったんである。わからないまま心の奥のわからなさの森に、その豊かな魔法の国のイメージはしまわ…

「菜の子ちゃんと龍の子」富安陽子

菜の子先生シリーズの小学生ヴァージョン。座敷童の学校版、学校怪談ならぬ学校神話とでも呼ぶべきジャンルである。和製メアリーポピンズを思わせる、しゃきしゃきピシピシした菜の子先生の「生まれながらの先生」的キャラクター、やたらと学校の規則を大切…

「おーばあちゃんはきらきら」たかどのほうこ

おーばあちゃんっていうのは、小学校一年生のチイちゃんのひいばあちゃんのことだ。おばあちゃんのうちのはなれに住んでいて、ときおりおばあちゃんと一緒にチイちゃんのところに来たり、チイちゃんが遊びに行ったりもする。チイちゃんはおーばあちゃんが大…

「夕凪の街 桜の国」こうの史代

こうの史代は広島出身者なのか、とプロフィールを見て、その生まれ育ち、そのアイデンティティに刻まれる土地の意味のいみじさを思う。方言の確かなネイティヴ感もさすがである。母の田舎が広島で、一時期住んでいたせいもあり広島には縁があるのだが、バリ…

「海うそ」梨木果歩

幾重もの喪失。 さまざまの喪失の物語を重ねる旅なのだ。時空を超えてゆく旅、さながらロードムービーのような旅の道行きの物語構成。これは、読者を今ある現実日常世界から、その宇宙的な道行への深みへと巻き込み、主人公と共に物語世界への旅に誘いこむた…

「なめらかで熱くて甘苦しくて」川上弘美

う〜ん。もともと感性の鋭さが好きなんだけどいささかぶっ飛ばし過ぎてる感のある激しい一冊。さまざまな作風を模索しているその実験的な作品の一環であるようにすら思える。どれもふかぶかとした実力を感じさせてくれる隅から隅まで川上弘美節ブイブイ、な…

「女のいない男たち」村上春樹

「女のいない男たち」というコンセプトアルバムのようなかたちで次の6編が収められている。(前書きでも作者本人が述べているように、それは或いは寧ろ、「女を失う男たち」というイメージである。) ここで失われる「女」とは、「男」にとって何を意味して…